【インタビュー】 Saitone。自分自身からEmboss(浮き彫り)して見えた音―

  • 2014.10.01

収録曲

  1. HighLoop Lingering
  2. SineLoop Ouverture
  3. Moph (Emboss_Edit)
  4. Boy Meets Game
Saitone プロフィール
国内に於いて早くからGameboy-Chiptuneをリリースしてきた一人。
8bit音源を用いて8bitに依存しない未知の音楽を開拓しようと試行錯誤している。
2008年には1st Album 『Overlapping Spiral』をリリース。
また、”Plaid”や”U-zhaan × rei harakami”を始めとした、ジャンルを超えたリミックスワークや各種コンピレーション、ニューヨーク、オーストラリア、スウェーデンなどで海外公演を行うなど多方面に活動中。
Saitoneが9月25日にEP「Emboss」をリリース。
6年ぶりとなる今作品への思いや制作秘話、自身の音楽性の葛藤など、語ってくれた。


-今回の「Emboss」は、まとまったリリースとしては6年ぶりになりますが、まずは現在の心情をお聞かせください。
サボってたなーと(笑)。
何かお話があればすぐにリリースをしようとは思っていたんですが、ファーストアルバムを出した次の年にマイケル・ジャクソンのカバー「Thriller」「Smooth Criminal」をリリースしまして、そのカヴァーのイメージに結構ひっぱられてしまったんですね。
-それはSaitoneさん自身が?
自分自身もそうだし、それをきっかけにカヴァーのオファーがものすごく増えてしまったんです。
カヴァーをリリースしたこと自体は良かったのですが、それ以降ヒットソングの8bit譜起し屋みたいな見られ方になってしまって、自分自身どういったものを出したら良いのか悩んでしまったんですね。
カヴァーをリリースしたVORC Recordsもその後なくなってしまって、音楽的にグルグル迷ってしまったんです。その後リリースできるところを探してはいたのですが、そんな中でもカヴァーやリミックスのオファーは来るので、それを制作すると言う状況がしばらく続いていました。
-その状況の中で、今EPをリリースすることになったきっかけは何だったのでしょうか。
3年ほど前からBunkai-Kei recordsのYako氏から「うちからリリースしませんか?」と声をかけていただいていて、すぐに出そうとは思っていたのですが、どうしても出した曲が自分の顔になると思うと、音楽性がフラフラしている時期にリリースするのはキツいな、と感じていたんです。
たまっている曲はたくさんあるんですよ。でも飽き性なので好みがコロコロ変わってしまって(笑)。
でも今回のリリースに関しては「今の自分」と言うよりは「これまでやってきた自分」を出そうと、色々考えた末にその結論に至りました。
-今回のEPのタイトルを「Emboss」と名づけた理由をお聞かせください。
和訳すると「浮き彫り」と言う意味なのですが、まぁ自分から浮き彫った部分です。
音楽性や、どういったものを出したらよいのか、そういうものを自分から浮き彫りにした曲を集めました。
すごくチップチューンらしくするとか、過剰に自己模倣して自分らしくする、と言ったことは抜きにして、チップチューンというフォーマットの中で素直にやった感じが浮き出ているかな、と思います。
何か新しいことしなくてはいけないとか、面白いことしなくてはいけない、と言う強迫観念がずっとあったのですが、それをなくした結果に浮き彫られた自分の根っこの部分が表現できているんじゃないかなと思います。
-アルバムの構想はどのように作られたのでしょうか。
構想は特にないです(笑)。曲数も4曲で出そう。と決まっていたわけではなくて、結果的に4曲になりました。
-では候補の曲が色々あった中で、最終選考に残ったのがこの4曲だったと。
そうですね。あとはBunkai-Kei recordsのカラーに合いそうかなと言うのも意識しました。
-選考に落とされた曲たちはどんな曲だったのでしょうか。
極端にメロディアスな曲と、極端にメロディアスではない曲は省きました。
-確かにメロディアスな部分と無機質な部分が両立されている印象がありました。曲展開についても今回意識された部分はあったのでしょうか。
先述した通り飽き性なので、2,3分ずっと四つ打ちが続くとかが作りながら我慢できなくなっちゃうんです(笑)。ポップスも好きだし、同じくらいアバンギャルドな曲も好きなので、その辺が曲の展開にも表れているかもしれないですね。
-今回、苦労した。と言う部分はありますか。
以前のアルバムはエンジニアがいてマスタリングなど任せていたのですが、今回は全て自分でやらなければいけなかったんで、その部分は悩みましたね。他のアーティストの曲と聞き比べてみたりしましたが、みんな音圧が高いんですよね。波形を見ると味付け海苔みたいな(笑)。
そのマジックが自分では難しかったですね。
-今回、こだわった部分はありますか。
今はみんな移動中にスマホなどでイヤホンで音楽を聴くことが多いので、ちょっとした「ブツ」って音や「ジー」っと言う音が入らないようには気をつけました。入ってたらごめんなさい。
-Saitoneさんの曲に入っていたら、それも曲の一部かなと思うリスナーが多いのではないでしょうか。
そうですね。確かにどっちがどっちだか分からないかもしれません(笑)。
以前も妻が「何で洗濯機止めてないの!?」と部屋の奥から走って来て、僕がスピーカーから音を出しているだけだった、みたいなことはよくあります。
でもこれが他人の曲で聴いたらちょっとむかつくかもしれませんね。携帯の音が鳴ってる思ったら「なんだよ曲かよ!」と。
-今回チップチューンに特化していないレーベルからリリースすることで、チップチューンをこれから作ろうと思っている人や、チップチューンを知らない人に何か影響はあると思いますか。
まったく畑違いの所でやる、と言うのはとてもチャレンジングなことだと思います。
チップチューンってとてもハードルが高いと思うんです。他の楽器をやっている人よりも数倍高いと。例えば歌います、とかピアノを弾きます、ギターを弾きます。って言うとそれだけで伝わりますが、ファミコンやゲームボーイ使って音楽やってますってまだまだ通じないと思うんです。まだ近所の名物親父が野菜くりぬいて笛作ってます。って方が通じる気がするんですよ。それに対してファミコン、ゲームボーイで音楽を作るって、100均のスノコでこんなもの作る!?みたいな感じじゃないですか。どうやって!?って感じでしょ(笑)。そのハードルがある限り、奇天烈なジャンルになってしまうと思うんですが、そこを恐れずにできたら良いなという思いはありました。
-Bunkai-Kei recordsはエレクトロニカやアンビエントの印象が強いレーベルだと思うのですが、Saitoneさんの楽曲はとてもレーベルのカラーに合っている印象がありました。
レーベルカラーにフィットしてくれてたら嬉しいなと思います。それは、妥協したと言う意味ではなくて、自分の引き出しの中からそういう部分を大きくフィーチャーしたというのはあります。
-エレクトロニカやアンビエントが好きなリスナーが、Saitoneさんの曲を聴いてチップチューンに興味を持ってくれると嬉しいなと思いますが、いかがでしょうか。
そうですね。「Emboss」を聴いて、チップチューンをやってみたいな、と思ってくれた人がいたら嬉しいですし、もちろんウェルカムです。
チップチューンの良いところは、音楽のジャンルがないところなので、どこから来ていただいても構わないと思っています。そういう音を使っていれば何でもいいんです。それこそ義太夫でも良いですし。
2006年にN.YでやったBLIP FESTIVALの時はお客さんに全然黒人がいなかったんですが、最近はMEGA RANだったり、QUARTA330の音を聴いてFlying Lotusが彼にリミックスオファーをしてきたり、Timbalandが丸パクリして話題になったり、黒人が気にしてくれているのは嬉しいですね。
-MEGA RAN Japan Tourに参加していましたよね。
はい。時間の都合で1曲だけの参加となったのですが、MEGA RANは真面目ですごくナイスガイでしたね。
-今回のEP、リスナーにはどんな風に楽しんでもらいたいですか?
それぞれの感じ方で聴いてくれると良いなと思います。それが全てです。
何か違うな?って人もいると思いますが…。
-そんなに弱気にならないでください(笑)。
前回と違う部分はあると思うのですが、根本的には自分から出た曲には違いないですし、流行のジャンルを取り入れているわけではないので。そこに期待している方がいたら、ごめんなさい。
-次のリリースの予定はありますか?
厳しい質問ですね。今のところないですが、今勢いがついているので、オファーを待たなくても自分から発信できれば良いなと思います。
-今後やってみたいこと、力を入れていきたい活動はありますか。
次のリリースをしたいです(笑)。
曲を出すことが全てなので、とにかくそれに力を入れて行きたいですね。
あとは「オハヨウ(※)」ですね。「オハヨウ」の日めくりカレンダーとか作りたいですね。

※「オハヨウ」とは、Saitone氏がTwitterで毎日ツイートしているネタポスト。

-今までの「オハヨウ」のログはあるのでしょうか。
はい。取ってあります。
今年で4年目なんですよ。さすがに重複してる部分もあって、ヒットが少なくなってきていますね。
-最後に、「CHIP UNION」を見ている方に一言お願いいたします。
「CHIP UNION」は今までにありそうでなかった、素晴らしいサイトだと思います。とても明るいし、ポータルとして優れていると思うので、是非チェックしていただきたい…と言うと更新するスタッフにプレッシャーがかかってしまいますが(笑)。
まぁ、いろんな人がいるんだよ、世の中には。と言うことを知っていただきたいです!
-Saitoneさん、ありがとうございました。

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